Colum 未来の薬局

これからの薬局はどこに向かうのか

医薬分業が7割を超えた今、転換期に来ている

この20年で、調剤薬局、そして薬剤師を取り巻く環境は、大きく変化しました。

日本薬剤師会の公表によれば、1995年には20%程度であった医薬分業率が、2015年に初めて70%を超えました。(下図)

医薬分業の流れの中で、調剤薬局の店舗数は年々増え、その数は今や50,000店。2015年時点でコンビニエンスストアの店舗数を上回ったといわれています。

薬剤師は、2006年より薬学部の6年生過程がスタートし、教育の変化が採用に大きな影響を及ぼしました。

そして、今また、調剤薬局や薬剤師は、大きな転換点を迎えています。

本コラムでは、そんな「未来の薬局」について考えていきたいと思います。
概論にとどまらず、さまざまな規模の調剤薬局にインタビューし、それぞれの「未来の薬局」像についてもご紹介していく予定です。

第1回目の今回は、まずは、調剤薬局の“これまで”と“これから”の変化を、改めてまとめてみたいと思います。

昔は「薬は医者でもらうもの」だった

昔は、診察後に医療機関の中で薬を受け取るという院内処方が当たり前で、「薬は医者でもらうもの」というイメージを誰もが持っていました。1990年代の中頃から、厚生労働省の旗振りもあって院外処方率は加速度的に増していきます。

しかし、急速に医薬分業を推し進めたことにより、弊害も生まれました。

門前薬局が増えすぎたことで、患者は医療機関ごとに個々の薬局で処方薬を受け取るようになりました。これでは機能的に院内処方と何ら変わりなく、医薬分業に対する疑問の声が上がり始めます。さらに、大手調剤薬局チェーンの高額な役員報酬が取り沙汰されるなどの批判も高まりました。

実際、関西医科大学総合医療センターのように、院外から院内処方に切り替える病院も出てきており、医薬分業のあり方を見直すべきだという機運が高まりました。

そもそもなぜ医薬分業なのか

推進の背景には、医療機関の薬価差益

医薬分業の大義名分は「医療の専門家としての医師」と「薬の専門家としての薬剤師」が対等な立場で、双方からケアすることで、患者の安全・利益を守るということにあります。

院内処方が行われていた時代、医療機関の稼ぎどころは薬価差益でした。今でこそ、薬価差益は10%を下回っていますが、1960年代には30~40%もあったといわれています。医療機関は、薬を処方すれはするほど儲かるため、医師の過剰処方・投薬が問題視されるようになりました。患者の利益を守るためにも、医療機関と薬局の経営分離が求められました。

このような背景から、厚生労働省も薬価差益の縮小に取り組んできた結果、前述のとおり、1990年代に急速に院外処方が進みます。

分業化のメリットは疑義照会と後発医薬品の推進

今でこそ医薬分業に対する疑問や批判は高まっていますが、「患者の安全・利益を守る」という面でメリットを生み出したことも確かです。

その1つが、医療機関が出す処方箋に対して、薬学的観点から疑義がある場合、薬剤師が処方医に対して行う疑義照会です。患者の薬物療法の有効性・安全性の向上につながるもので、厚生労働省の調査(平成25年)によれば、年間4,300万枚相当の処方箋について疑義照会が実施されています。

もう1つは、後発医薬品の推進=医療費削減。現在、調剤薬局(薬剤師)がその主たる担い手となっています。

今後、調剤薬局に求められること

立地中心の門前から地域医療の担い手へシフトする

団塊世代が75歳以上となる2025年に向け、厚生労働省は、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築を推進しています。

一部の高機能病院に患者が集中するのではなく、患者の目的によって地域の病院や診療所などの利用を促し、患者を中心に地域医療を考えるという流れです。

調剤薬局も同様に、地域医療の担い手となることが求められています。そのためには、より多くの処方箋を受け付ける“門前”という立地中心から、患者中心にシフトする必要があります。

2015年、厚生労働省は、「患者のための薬局ビジョン」を提示しました。2016年10月より「かかりつけ薬剤師・薬局」と「健康サポート機能を有する薬局」の制度が正式にスタートしましたが、この新制度は、まさに患者中心の考えで整備されたといえます。

細かい点は省きますが、この新たな制度では、地域医療の担い手としての調剤薬局であるために、以下大きく2つの機能拡張が求められています。

  • 在宅医療のサポート
  • OTC薬品を含む患者の“包括的”な健康サポート機能

“町のくすりやさん”に立ち返る

OTC薬品の話になりますが、門前薬局が増える中で、「OTC薬品について気軽に相談して購入できる場所」という、元来、薬局がもっていた役割は失われつつありました。新たな制度は、立地から患者中心にシフトすることで、失われつつあった薬局元来の役割を取り戻そうという動きでもあります。

医療は、あくまでも病気やケガの治療を行う機関であり、より広い意味で患者の健康をサポートする機関、もしくは職種は、今後、薬局であり薬剤師であるべきということです。

セルフメディケーション税制が導入され、今後、ますますOTC薬の相談をしたい人は増えていくはずです。

どのようなOTC薬があり、その効果・効能、そしてどのような場合は医療機関を受診した方がいいのか等、“町のくすりやさん”としての役割を果たすことができれば、今、日本が抱える医療費の問題にも大きく貢献するであろうと思います。

薬剤師によるトリアージ

日本薬剤師会も同様に、健康に不安を抱える人が真っ先に立ち寄る場所は薬局であり、最初に相談する医療職種は、医師ではなく、薬剤師であるという考え方を示しています。

日本薬剤師会のホームページには、以下の記載があります。

薬剤師は、体調のすぐれない方が薬局を訪れた際に、症状の訴えなどから、医療機関への受診勧奨、一般用医薬品(OTC薬)による対応、生活指導、のいずれかに振り分け、適切な対応を提案しています。こうした業務を、最近では「薬剤師によるトリアージ」と呼び、薬剤師が地域のプライマリ・ケアにおいて果たす重要な役割となっています。
日本薬剤師会ホームページ

また、日本薬剤師会が提示した「薬剤師の将来ビジョン」には、以下の記載があります。

薬剤師=薬の専門家、ではなく、薬剤師=一番身近な医療人、へと役割が変わっていくことを目指している。(第5世代)
『薬剤師の将来ビジョン』日本薬剤師会発表

どちらも、地域医療の担い手として、“町のくすりやさん”としての価値を表現しています。

患者は薬局・薬剤師に「何も」期待していない?

しかし、現実問題、薬剤師をもっとも身近な医療人として一般的に認識されているかというと、疑問が残ります。

私の周囲で、普段、医療に関わる仕事をしていない何人かに薬剤師のイメージを聞いてみたところ、ほとんどが「処方箋を持って行ったら薬を出してくれる人」と答えました。これは、調剤薬局の多くが処方箋の受付を主とする、いわゆる門前薬局としてしか機能していないということの表れでしょう。

医療機関等での説明について、患者さんに行ったアンケートでは、治療や検査に関する項目では、ほとんどが医師に説明してほしいという回答結果になりました。(下図)薬についてでさえ、医師と薬剤師が同率になりました。これは、医師の方が信頼性が高いということではなく、そもそも薬剤師がそういった説明をしてくれる人、相談をしてもいい人だということが認知されてないことが要因ではないかと考えます。

先に述べたように、調剤薬局が健康に不安を抱える人が真っ先に立ち寄る場所であろうとするならば、このアンケート項目の「治療の経過」や「検査の結果」についての相談も、医師ではなく、まずは薬剤師さんに気軽に聞いてみようという患者さんが多くなるはずなのです。

未来の薬局はひとりひとりの健康マネージャーに

今、調剤薬局が大きな転換点にある、ということは、薬局経営に携わる方々の共通認識であることは間違いないでしょう。

従来の“薬剤師=薬を調剤する人”、“調剤薬局=処方箋を受付けるところ”から、“薬剤師=健康をサポートしてくれる身近な医療人”“調剤薬局=地域の健康サポート拠点”となるためには、薬局および、薬剤師の仕事を再定義する必要があると思います。

まずは、薬剤師の皆さん、そして、各調剤薬局の経営に携わる方々が「自分たちはどういうことを相談してほしいのか」、「どういう悩みに応えられるプロでありたいのか」を考えていただければと思います。

ここで一つ、アイセイ薬局の会社パンフレットに秀逸なコピーがありましたので、紹介させていただきます。

健康にも、部活みたいに『マネージャー』がいたら、便利なのに。
アイセイ薬局ホームページ

未来の薬局、そして、薬剤師は、きっとわたしたちにとっての健康マネージャーになれる存在であってほしいと思います。

今回は本コラム第1回目ということで、調剤薬局の“これまで”と“これから”についてまとめてみました。
次回は、未来の薬局・薬剤師について具体的にその仕事内容についてイメージしてみたいと思います。

今回のポイント

  1. 医薬分業は、薬価差益からくる医師の過剰処方・投薬が問題視され、医療機関と薬局の経営の分離が社会背景にあり、急速に推進された。
  2. 医薬分業により、処方箋の疑義照会や後発医薬品の推進といったメリットも生まれたが、一方で、門前薬局が増えすぎたことでの弊害も生まれ、院外処方を見直す医療機関も出てきている。
  3. 厚生労働省が示した「患者のための薬局ビジョン」では、門前という立地中心ではなく患者中心にあるべきという調剤薬局・薬剤師の青写真が示されている。
  4. 調剤薬局・薬剤師は、地域医療の担い手として、健康に不安を抱える人が真っ先に立ち寄り相談できる場所であり、身近な医療人であるべきである。
  5. ただし、まだ一般の人にはそこまでの認知はないため、今後は、個々の調剤薬局・薬剤師の強みは何かを考え、打ち出していくことが大切だといえる。