Colum だから患者が集まる

繁盛しているクリニックがやっていること事例集

繁盛しているクリニックがやっていること事例集 患者を集めることは経営である

集患・増患をテーマに、これまでの5回では、以下のテーマを取り上げました。

  1. 問診票を活⽤した患者分析
  2. ホームページリニューアル
  3. 待合室有効活⽤⽅法としてのデジタルサイネージ
  4. 医師やスタッフの接遇
  5. 院内冊⼦

最終回となる今回は、実際に流⾏っているクリニックではどんなことをしているのか?という事例をいくつかご紹介します。

そして、クリニックの経営というものについて考えてみたいと思います。

“繁盛しているクリニック”には理由がある

私は、医療業界で仕事をするようになってから、10年以上になります。
数えているわけではありませんが、これまでに訪問したクリニック数は、おそらく数百箇所、ひょっとすると千箇所近くになるかもしれません。

多くのクリニックを訪問していると、繁盛しているクリニックには理由があるということが、なんとなくわかるようになります。

そんな中でも、キラリと光る取り組みを⾏っているクリニックに出会うことがあります。
クリニック側からすると、必ずしも集患・増患を意識してその取り組みを⾏っているわけではないかもしれません。しかし、続けた結果として、確実に患者を増やすことにつながっているのだろうと思えるものばかりです。
今回は、特に院内での取り組みを中⼼に、2つの事例をご紹介したいと思います。

事例1:
管理指標を設定し日々の行動に活かす眼科クリニック

まず、とある眼科クリニックの事例からご紹介します。

ポイントは、様々な数値をとる仕組みをつくり、その数値の変化を⽇々のスタッフの⾏動にブレイクダウンしたところにあります。

背景として、当クリニックの院⻑は、院⻑職以外にも仕事を持っており、診察を含め、ある程度のクリニック運営を他の医師やスタッフに任せざるをえないという状況にありました。そこで、院⻑は⾃分が不在でもクリニックの様⼦を把握できるよう、スタッフの業務にいくつかのルールを設けました。

ルール1:⽇報で経営上、重要な数値をカウント

1つ⽬のルールは、⽇報をつけることです。
⽇報と⾔っても、エクセルでフォーマットを作成し、毎⽇の診察終了後に医療事務スタッフが決まった項⽬を⼊⼒するという簡単なものです。

具体的な⼊⼒項⽬は、以下のとおりです。

⽇報の⼊⼒項⽬例

  • 担当医師
  • 出勤スタッフ数(受付・看護師等の職種別)
  • 天気
  • 1⽇の患者数
  • 1⽇の売上(保険・⾃費別)
  • 新規患者と再来院患者の割合(患者数)
  • 来院経路別の患者数(何を⾒て当院を知り来院したか)
  • 経営上、重要としている検査等の実施数
  • 特殊要因(例えば、翌⽇や前⽇が祝⽇など)

これらの項⽬は、⾃分が不在でもどんな数字を⾒ておけばクリニックの様⼦がわかるかという視点で院⻑⾃⾝が決めています。

⽉次のレセプト枚数や患者総数を把握しているクリニックは多いですが、上記のような⽇次の細かい数値や要因まで記録しているクリニックはあまりありません。1⽇単位で記録を取ることは、⼤きな⼿間にならなくとも、後から数字を集めて分析しようとすると⼤変な作業になります。

しかし、⽇々の患者数あたりのスタッフ数や平均診療単価等は、経営上の重要な管理指標(KPI=Key Performance Indicator)です。

さらに、担当医師や天気、特殊要因まで合わせて記録をしておけば、KPIに変化が⾒られた際「なぜそうなったのか?」を考えることができるようになります。また、⼿を打つべきタイミングを逃さずに、対策をとることも可能です。

経営では、⽇々起きていることを正しく把握するための管理指標の設定が⼤切です。この⽇報という取組は、管理指標を継続して取るための仕組みになっています。

ルール2:管理指標をお声がけというアクションへ

2つ⽬のルールは、患者さんにお声がけをして、その数をカウントするというものです。

経営上、重視したい検査や治療を設定しておき、「〇〇の患者さんには、△△の検査or治療を勧める」というイメージです。

このお声がけには、いくつかのパターンがあり、誰が声がけするのかもそのパターンごとに決めておきます。声がけ担当者は、正の字で簡単にカウントしておき、⽇報に転記します。

これも重要な管理指標を取る仕組みになるとともに、管理指標をお声がけという努⼒可能なアクションまでブレイクダウンすることで、⽇々の細かい⾏動まで経営に結びつけていると⾔えます。

指標から⾒えた⼯夫の積み重ねが増患につながる

このクリニックの事例は「KPIを設定し、⽇々集計する仕組みをつくる」という施策です。

医療機関でも会社でも、経営で“いのいちばん”にやるべきことは「今、何が起きているのかを知る」ことです。

経営者は、意外と細かい数値は⾒ていません。しかし、⽇々のちょっとした変化を感じ取れないと気づいた時点では⼿遅れということもあります。この施策は、そういうリスクの低減にも役立ちます。

もちろん、直接的に集患・増患というわけではありません。
しかし、⽇々の変化を数字という⽬に⾒えるものにすることで、増患のための⼯夫やアイディアが⽣まれたり、業務の効率化につながったりします。その積み重ねが増患につながるのだと思います。

事例2:
スタッフの参加意識醸成に投資する総合内科クリニック

もう1つの事例として、とある総合内科クリニックの院内ミーティングと勉強会の取り組みをご紹介します。

このクリニックでは、毎⽉1回、スタッフ全員参加の院内ミーティング・勉強会を実施しています。全員参加のためその⽇は丸一日を特別休診としています。

院内ミーティング・勉強会にはルールを設定し全員参加

ミーティングの議題、勉強会のトピックスは毎⽉異なるものを取り上げるなど、開催にあたっては、以下のように、いくつかのルールを設けています。院内ミーティング・勉強会のルール

参加意識が芽生えることでスタッフの定着率アップ

このクリニックの事例で⼤切なことは、スタッフ教育はもちろん、クリニック経営に対するスタッフの参加意識の醸成に投資をしていることです。

クリニック運営には、スタッフの協⼒は⽋かせません。
クリニックの評判を上げるのも下げるのもスタッフであると⾔っても過⾔ではないくらいです。

ただ、クリニックだとスタッフの多くがパートタイマーであることも珍しくありません。シフト勤務ではスタッフ全員が顔を合わせる機会が少なく、職場への参加意識が芽⽣えにくいという課題もあります。参加意識が低いと、ちょっとしたことで退職してしまうケースも少なくありません。

だからこそ、あえてスタッフ主体による職場全体のミーティングを開催し、院⻑は議題の設定や議事進⾏のフォローに徹することで、スタッフの⾃主的な参加意識を尊重することが⼤切です。実際、この総合内科クリニックでは、スタッフの定着率がアップしたそうです。

スタッフ⼀⼈⼀⼈がどうすれば患者を増やすことができるか等を⾃ら考える機会を設けることで、受付などの接遇⾯がレベルアップし、そのことで患者の評判も良くなるという相乗効果が⽣まれます。

対患者さんにはロイヤリティー向上が鍵

上述の2つの事例では、院内、特に、スタッフの取り組みでしたが、患者さんに対する取り組みも簡単にご紹介します。

診察室で医師からクリニック紹介カードを手渡し

名刺サイズのクリニック紹介カードを診察室で医師から手渡しします。

その際、例えば「インフルエンザの予防接種はいつからですよ」と⼀⾔添えると、患者さんの印象にも残り、⼝コミが⽣まれやすくなります。

院長インタビュー動画放映

「どんな先生が診てるの?」という患者さんの不安を払拭するため、先生の自己紹介、専門分野、診察で気をつけていることなどを、先生自らの言葉で語るインタビューを撮影して、待合室のデジタルサイネージで放映しているクリニックもあります。

さらに、同じ動画をホームページにも掲載しており、新規患者さんにも安心感があります。

スタッフ全員が自己紹介名札をつける

飲食店でよく見られますが、顔写真や呼び名、趣味といった簡単な自己紹介を書いた名札を作成し、スタッフが全員つけるというものです。

患者さんとの会話のネタになったり、会話にまではならなくても医師やスタッフの人柄が伝わって親近感をもってくれるようになります。

当たり前のことをやり続けること

今回の事例は、集患・増患という観点では即効性はないかもしれません。しかし、患者を集め増やすための取り組みの起点は、先⽣の熱意とスタッフの意識です。

繁盛していて経営も上⼿くいっているクリニックは、他と何が違うかというと、当たり前のことをきちんとやり続けているかどうか。多くの場合、最初は勢いこんで頑張るものの、途中で⼒尽きて放置されてしまいます。

継続するためには、継続できるようにするための仕組みづくりも⼤切だということです。

終わりに -より良い医療を提供するために

今回で、「だから患者が集まる!を考えるコラム」は最終回となります。

毎回異なるテーマで、クリニックにおける集患・増患に関わる施策を取り上げてきましたが、どれも⽬新しい⼿法ではありません。
“やろうと思えばできること”を選んでご紹介するように努めました。もちろん、すべてのクリニックが全部の施策をやるべきというわけではありません。取り⼊れられそうなものを、試験的に始めてみるということでいいかと思います。

これまでの医療の世界は、クリニックを開業さえすれば⾃然と患者が集まるものでした。

しかし、これからの時代は違います。少⼦⾼齢化の影響により、2020年にはついに外来患者が減少傾向に転じると予測されています。つまり、⼯夫をすることなく、患者さんをただ待っているだけのクリニックは、淘汰されていくことになります。

私は、医師の仕事は、本来「良い医療を提供することである」と考えています。経営難に陥ってしまえば、元も⼦もありません。だからこそ、少しでも多くのクリニックが「患者を集める仕組み」をつくっておけるようになったらいいという思いで、本コラムを書かせていただきました。

全6回ではありましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
医療機関の広報に関することで何かお困りごとがございましたら、当社でお役に⽴てることがあるかもしれません。その際は、ぜひお気軽にご相談ください。

今回のポイント

  1. 直接的な増患対策ではないが、流⾏っているクリニックには継続して⾏なっている取組みがある。
  2. 経営では、⽇々起きていることを正しく把握するための管理指標の設定が重要である。
  3. 管理指標の変化を⾒ていくことで、具体的なアクションにブレイクダウンすることができる。
  4. 全スタッフが主体となれる院内ミーティングや勉強会は、職場への参加意識を強化する。
  5. 施策の“継続”がやがて集患・増患に結実するため、何をやるか以上に継続する仕組みが重要である。