Colum 未来の薬局

「病気を治す」ことへのこだわり <高山薬局>

東京都品川区の旗の台駅から徒歩5分の高山薬局。漢方・自家製剤と処方箋受付の2つの看板が特徴。

東京都品川区の旗の台駅から徒歩5分のところにある高山薬局。

本コラムで第1回でインタビューさせていただいたライフバランス薬局は「検体測定室+調剤処方」、第2回の八幡西調剤薬局は「処方メイン」、という業態でしたが、それとはまた違う業態の非常に面白い薬局がある、ということで早速インタビューにお伺いしました。

昭和54年創業の「相談薬局」

高山薬局は、昭和54年、現代表取締役社長の高山智之さんのお父上である先代が、この地で始めたそうです。

お話頂いた二代目代表取締役社長・薬剤師の高山智之さん

『当時は、(院内処方メインだったので)処方箋なんて日に数枚あるかどうか。相談薬局ということで患者さんの症状をお聞きした上で、漢方とOTC、自家製剤を処方する薬局としてスタートしました。

それが何十年続いて、お客様もそれなりに付いてくださっていました。そのような中、医薬分業が進んできて、徐々に処方箋のお客さんが増えてきました。

父が5年前に亡くなって、今後のことを考えた時に、処方箋のお客さんにも自分たちの強み、漢方やOTCにも目を向けてもらって両方を利用してもらえる薬局でありたい、というようなことを意識するようになりました。』

斜め向かいからの移転

実は高山薬局は、もともと現在の場所ではなく、斜め向かいの場所にありました。2016年12月に現在の場所にお引っ越し。

旧店舗。斜め向かいに引っ越しましたのお知らせが貼ってあります。

『以前の店舗は、このお店の2/3のスペースでした。調剤室も狭かった。処方箋も増えてきて、調剤室自体も物で溢れ返ってたんですよ。ジェネリックも増えたことで、場合によっては一つのものに2倍3倍のスペースがかかってしまう。調剤室から店の方にも在庫が溢れ出ているような状態でした。

待合のお客さんもせっかく来てくださっているのにスペースがなくて、立って待っていただいたり、調剤室もスペースが機能的でないので投薬にも時間がかかってしまうという悪循環でした。

そんな中、大きなお店を探していたら、ちょうど斜め向かいのこのスペースで2店舗同時(※もともとは2店舗別々のお店だったそうです)に辞めると聞いて、すぐにオーナーに申込みました。運が良かったですね。』

店舗が広くなった事で、もともとやりたかった「処方箋のお客さまにも漢方やOTCのご相談をいただく」ための店舗作りが出来たそうです。

壁一面に様々な商品や見慣れないOTC/漢方が並んでいて待っている間に見て頂けるようにしている。

『一箇所で、処方と、漢方・OTCと別け隔てせずに行き来できる空間を意識しました。

こうやって待合室で手に取れるところに商品があったりすると、相談してくれるようになるんですよね。コレいいの?とか。だから、商品を見ていただきたいので、雑誌も置いていないんですよ。それよりもこうやって並んでいるものを見て関心を持ってもらいたいな、と』

高山薬局では、両側の壁一面、いろいろな商品が置いてあります。見たことがないものが多く、それぞれどんな症状に効くのか?が説明書きとしてPOPなどに記載されています。

『お医者さんにかかるほどではない疾病、症状ってありますよね。例えばちょっと肩こりがある、とか、痔があってね、とか。商品があることによってそういった悩みもご相談してくれるんです。花粉症なんて漢方の得意領域だったりしますから、試してみて、それなりに良い結果が出ると、また別の疾患でもご相談いただける。』

処方のお客さんが、医師には相談しないことも相談してくれる。また逆に漢方のお客さんが、待合室で待てるようになって、徐々に処方を持ち込んでくれることも増えたとのことです。

実際、移転してお客さんは減りませんでしたか?との質問に『今のところは処方枚数も増えてますし、ご相談の方も増えてます。理想通りのスタートが切れました』と笑顔で答えてくれました。

「治す」ことへのこだわり

高山薬局では漢方はもとより、置いてあるOTCもいわゆるよく見るナショナルブランドのものではありません。

『昔はナショナルブランドのものも置いてたんですが、そういうものとは違い、効き目を重視した商品を取り寄せて、とにかく治してみせる、という気概を持って取り組んできた結果、今のようなラインアップになりました。』

『ドラッグストアとかに行くと、「そういう症状ならコレとコレがありますよ」とお客さんに選ばせますよね。でも私たちの場合は、症状とかその他のいろいろなことも聞かせてもらった上で、「それなら、これにしましょう。その症状ならば、コレとコレを一緒に飲んだ方が効きます」と伝えるんです。場合によっては、中で専用の漢方を作ることももちろんあります。』

確かに、同じ症状でも人によって症状の重さも違えば、効きやすい薬や効きにくい薬も違います。ドラッグストアなどでいろんな風邪薬を出されて、「何が違うの?」と感じたことのある人も多いはず。

『治す、というところをメインにしていて、何を売る、というわけではないんですよ。結局はいかに治療して差し上げるか、ってところが大前提なんで。「良くなったよ、おかげさまでありがとう」と言われるのを目指しているんです。』

こうやって聞くとすごくシンプルなことのように聞こえますが、薬剤師・薬局としてのスタンスは全く違うと感じます。なぜ、他の薬局やドラッグストアでも同じようなことは出来ないのでしょうか?

『調剤薬局だと、OTCとか漢方に関しては、ほぼ学校で学んだ以外触れる機会もないし、わからないんですよね。あと、日本はやはり病院の先生の指示通りに薬を出すのが処方箋だし、それは人の責任で薬を出しているということ。でも、私たちは自家製剤作ったり、これが良いですよ、と勧める以上は、効かなかったときには責任は自分にあるし、自分で責任を負ってるんです。』

医師の下位職種でなく、薬剤師として自分の責任において患者と接して薬を処方する。高山薬局の本質を見たような気がしました。

複数の薬局での共同グループ

お話をお聞きしている中で、高山薬局のような思想で、自家製剤や漢方などに取り組んでいる薬局が集まってグループを作っているお話もお伺いしました。

協励薬局「私の信念」。『お客さんから相談を受けて薬を販売するまでの信念がここに凝縮されていますよね。』

『古くから同じような意識で薬に取り組んでいる薬局が多く加入してる日本薬局協励会という組織があります。

協励会には、私たちのような薬局が全国で3,000店舗ほど参加しています。その組織で、私たちのニーズや意識を反映させた商品を賛助メーカに伝えて作ってもらっているんです。

協励会独自の商品として、セルフで陳列して売るのではなく、対面でしっかり相談を受けて、お客様を最後まで面倒見ていこうというスタンスです』

独自の商品を扱うために、小さな薬局単独ではできないことを、グループとして集まって商品企画や商品開発まで担っていく。日本薬局協励会は昭和28年に設立され、全国の個店薬局同士の情報交換や検討会、勉強会なども開催されているとのことでした。

余分なものを削ぎ落として尖らせる

独自のスタイルで、長くやってきた高山薬局も、一時期はドラッグストアを脅威に感じたこともあったそうです。

『僕らの小さい頃は薬のヒグチぐらいしかなかったしね。目標1,300店って(笑)

それが、どんどんドラッグストアのチェーンが増えて、薬は、スーパーで食品を買うのと同じように、自分で選んで買うものだ、という意識に変えていきましたよね。その結果、僕らのような小さな薬局がどんどん減っていってしまった。』

実際、一時期、高山薬局も両側を挟まれるようにドラッグストアができたとのこと。

『当初、このあたりはうちぐらいしか薬局がなかったから、佐藤製薬とかエスエス製薬とかのナショナルブランドのものもたくさん置いてて、飛ぶように売れたんですよ。でもドラッグストアが来てからパッと売れなくなっちゃった。よほど真剣に取り組んで、お客さんを取り込んでいかないとどんどんお客さんは流れていっちゃうんですよ。ましては同じ商品を扱っていたら尚更ね。価格もあちらのほうが安いですし。』

そんな中、いかに大手ドラッグや調剤薬局チェーンと比べて差別化するか?について随分工夫をしてきたそうです。

プレゼントキャンペーンのチラシと1000円ごとに1枚もらえるチケット。商品は交換期間中、待合室に積み上げるそうです。

『ドラッグストアでも買えるようなものはどんどん削っていきました。うちに来て買う必要のないものは、うちに置かない。その代わり、自分たちの得意な漢方・独自OTC・自家製剤に特化していく。そうすると、患者さんが自然に住み分けしてくれるんですよ。安いものはあっち、相談はこっち、という風に。』

高山薬局では、小さな工夫をどんどん積み重ねています。

緑茶やコーヒーが無料で飲めるサーバを置いたり、1,000円お買上げごとに独自のチケットを配って、3ヶ月に1回、全国のご当地の美味しいものと振ったサイコロの目の分だけ交換出来るような取り組みも、先代の頃から続けているそうです。

『どんと構えてると、あっという間にお客さんなんていなくなるんですよ。力量があっても工夫していないとダメ。工夫していても力量がないとダメでしょ?』

『その両方と、あとはスタッフ。接客するスタッフの人間性みたいなところがすごく大切。うちのスタッフにも、「お客さんの世間話が始まったら出来る限りそれに付き合ってあげて」って話はするんです。』

若い人をどうやって取り込んでいくか

ここまで、お話をお伺いしていて、きっと昔の薬局「町のくすりやさん」は、このスタイルだったんだろうな、と感じました。でも、一方で今の若い方は、ドラッグストアでの薬の買い方に慣れてしまっていて、この相談する、というスタイルを中々受け入れてもらえないのでは?とも感じました。

『確かに相談に来てくださる年齢で一番多いのは、50代から70代の女性。

若い人は健康なので、そもそも間口は狭いんですけど、若い人が悩む問題として、例えばニキビとかがありますよね。いろいろ試してみたり、病院に行ってステロイド処方されても結局あまり良くならなくて、誰かに相談したいと思う領域ですよね。ニキビは内分泌系の疾患なので漢方との相性が非常に良い領域でもあるんです。』

ニキビに限らず、花粉症や、かぜに対する漢方の処方など、その年代の人が抱える悩みや症状にフォーカスした取り組みを行っているそうです。高山薬局では、店舗のリニューアルに伴い、ホームページもリニューアルすることに。

『若い人は、自分でいろいろと調べてから来るんで、ホームページも本当に大切。ニキビ・漢方・品川、とかのキーワードで調べたりしますし、きちんとページを割いて書いてあると、この店は力を入れてやっているんだな、と感じてもらえますよね。』

たとえパイとして多くはなくても、若い人もお客さんとして取り込んでいくために、若い方が何を考え、何に悩んでいるかを理解することで、結果として将来的にも薬局の経営が安定していく、そういった長期的なビジョンを感じました。

薬局の原点回帰

高山薬局は、院内処方が主流だった時代からの「町のくすりやさん」。
今はドラッグストアや大手調剤薬局チェーンに押されて少なくなってしまいましたが、医療費が厳しくなった今、国としても薬局に担ってもらう役割を増やさざるを得ません。

『かかりつけ薬局とかセルフメディケーション、健康サポート薬局、って僕らにとっては逆に追い風ですよね。処方だけの付き合いでなく、OTCや漢方まで含めて、お客さんと突っ込んで関わるという意味では、(ドラッグストアや調剤薬局グループよりも)僕らのほうが距離的に近いところでやっているし、国が求めているスタイルに近いかなという自負はありますよ。』

昔は町にひとつは必ずあった薬局が、自分たちが何を提供できるのか力を蓄え、たゆまぬ工夫をしてきて、時代とともに求められるようになってきた。高山薬局は、そんな薬局の原点回帰の姿なのかもしれません。

この記事を読むと、「それじゃ、昔に戻ればよかったってこと?」と読めてしまうかもしれません。しかし、インタビューの中で高山さんが『個人店がどんどんなくなったのは、結局、差別化を図ってこなかったツケを、ドラッグストアに払わされたということなんですよ』とおっしゃっていて、非常に印象的でした。

特に、高山さんがおっしゃっていたことは、医療にとって、薬局にとって、薬剤師にとって、何を差別化要因とすべきかについて最も本質的だと感じました。

何が一番大事かって考えたら、とてもシンプル。治りたくて来てるんだから、「治してあげましょ。」ってとこなんです。

昔あった薬局のようでいて、本質は新しい。まさに「未来の薬局」だと感じました。

高山薬局

高山薬局
代表取締役社長・薬剤師 高山 智之
〒142-0064  東京都品川区旗の台4-6-5
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FAX:03-3787-3297
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