この間、小学2年生になる娘が初めて親元を1週間ほど離れる合宿に行きまして、成長が嬉しいとともに、寂しさも感じる今日この頃です。
数年前からひとりでコツコツやってた新事業も、最近はようやく会社の正式な事業になりつつあり、私の手も離れつつあって、そのことに寂しさを感じるのは、やはり自分が作った事業っていつまでも子供みたいなものだからなのかもしれません。
この間、元ちきゅうの浅井さんが立ち上げたsuki社(サイトが見当たらなかったから創立趣旨書貼っとく)主催の「くらたまなぶ 『リクルート「創刊男」の大ヒット発想術』 Kindle版リリース記念講演」のセミナーに参加してきました。
くらたまなぶさんは、リクルートで「とらばーゆ」「フロム・エー」「じゃらん」「ゼクシィ」「生活情報360(のちホットペッパー)」など次々と立ち上げて来たすごい人です。今のリクルートの収益の大半は、くらたさんが開発したと言っても過言ではない。
私もこの10年、製品開発や事業開発的なことをやってきて、最近はWEB問診のように少しは自分でも自信が持てるような製品なども出せるようになってきて、あらためてその経験を体系化する意味でも、次々と事業を立ち上げられる人ってどんなやり方をしているんだろうと興味があったので、kindle版で書籍も読ませてもらってセミナーにも参加してきました。
今回、本やセミナーを通じて、くらたさんが言っていることで自分なりにすごくしっくり来たことがいくつもあったので、私なりの解釈も含め少しご紹介できれば。
目次
答えが見えるまでヒアリング、悩んだら棚上げ
くらたさんの考え方の基本は「事業の答えは人の中にある」ということなんだと解釈してます。普通の人は、新たな事業を考える時に、自分の中でぼんやり仮説とかやりたい事が先にあって、それを形にしていく、みたいなプロセス(その過程の中で説得材料のためにチラっとヒアリングはする)が多かったりしますが、くらたさん的には、どんな事業にするのか自体をヒアリングに基づいて考えていく、と言っています。
これって言ってしまうとマーケットインかプロダクトアウトか、みたいなことなんでしょうが、実際問題として本当にマーケットインで新たな事業を考えられる人ってそんなに多くない気がします。(少なくとも私はちゃんとできていない)
確かに、自分が考えた仮説を先に持ってしまうとそれを無意識に補強しにいってしまう、という事が起こります。最初に本当にフラットな気持ちで、マーケットにどんな気持ちが多く転がっているのか調査しにいくところから始めることで、成功確率がグッと上がるんだと思います。
あと、セミナーで印象的だったのが「ヒアリングしてもなかなかヒントが見つからないときはどうするんですか?」と聞かれたことに対して
「ヒアリングしても納得感のある答えが見つからなかったら、またヒアリングに戻るんだよ。それでもまだ見つからなかったら、一旦その議題は棚にしまうの。ボツにするんじゃないよ。あくまで棚にしまうだけ。数年経ったらまた引っ張り出してくるときが来るかもしれないからね。」
と言っていたのがすごく印象的でした。
市場調査は過去の数字、マーケティングは未来の気持ち
事業開発において、市場調査、定量調査をどの程度やるべきなのか、私もかなり悩みます。この言葉はそのまま書籍から拝借してきたのですが、自分がもやもやっとしていたことがものすごくスッキリしました。読んで字のごとく。
くらたさんも市場調査自体は徹底的にやるとは言っていますが、マーケティングとはあくまで未来の気持ちを知る行動であり、過去の延長線上に必ずしも未来があるわけじゃないよってことなんだと思います。ここは人間の認知バイアスの問題で、人間の認知バイアスとしてどんな思い込みがあるのかについては、大ヒットしたFACTFULLNESSにも詳しく書いてあります。
ニーズよりもcomplaint(不平不満)
ヒアリングで何を聞くかといえば「不(怒り・悲しみ・諦め)を探り出す」という言葉をくらたさんは使っています。確かに、「どんな製品(サービス)がほしいですか?」という質問をしてもマトモに使える意見が返ってくることってほとんどないんです。それよりも気持ちを聞いてその中の「不」の部分を抽出していく作業だと解釈しています。特にヒアリングではいかに本音を出してもらえるか、ということに重きをおいて、どうやって本音を引き出すヒアリングをするべきかが書籍には細かく書かれていて、参考になりました。セミナー中にsukiの浅井さんが「勝手にアレンジしないでまずは言われたとおりにやってみたらすごく良かった。勝手にアレンジすべきじゃない」と言っていましたが、私もすぐ勝手にアレンジしたがるタイプなので反省。今度やるときは基本に忠実にまずはやってみたいと思ってます。
ソロバン症候群には気をつける
もちろん会社の事業なので、「儲かるの?」(=ソロバン)という部分は大事なんですが、くらたさんの本や話の中で、ほとんどその話は出てきませんでした。セミナーでも「くらたさんはソロバンについてどう考えていますか?」的な質問があったのですが、極論から言ってしまえばマーケティング(未来の気持ち)をちゃんと集められていれば、ソロバンはついてくることが多いよね、というような言い方(正確ではありません)をしていて、なるほどなーと思いました。
私も最近は事業開発とか新事業について相談されることも増えてきて、見ているとダメな事業企画って、過去の市場調査から明日の数字を組み立てていたり(数字しか話していない)、自社にこんな資産があるから(カタチ・段取りの話)きっと売れるはず(数字)みたいな計画で、そこには「誰の、何の不満を解決するの?」っていう部分がスポッと抜け落ちていることがあります。確かに会社の中で事業開発をする場合には数字が求められるのでそこに寄ってしまう気持ちは理解できるんですが、そうすると事業の本質の部分が弱くなったり消失してしまったりするよね、ということなんだと思います。なので、ソロバンも大事だけど最初はソロバンなんて意識しない、というぐらいの考え方のほうが良い事業に出会える気がしてます。
自分の苦手なところ
一方いくつか自分がまだ咀嚼しきれていない部分として、「ブレスト」の方法論、やり方の部分だと感じました。今までの経験的にも私は(最初のうちは)自分ひとりで事業を作ったりしてきたことしかないので、複数人でブレストをして「不をひっくり返して夢を創り出す」という部分はどうも腹落ちできていません。あとは私はそもそもソロバンを考えることが苦手なタイプなので、今度また新しい事業を作っていくときにはそういう苦手な部分にも取り組んでみたいなと思ったりしてます。
ふだん仕事をしていると、どうしても自分のやり方に固定化してしまいがちだし、そっちのほうが楽だったりします。でも新事業開発というゼロイチの世界でも、「確率を高める方法論」みたいなものはあるし、経験値が大事だったりするなと自分がやってみて本当に感じるようになりました。そういう意味でもたまにこうやって外に出て人の話を聞いたり、刺激を受けるのも大事って思いました。
ちなみに、sukiの浅井さんは、もともと浅井さんがちきゅうをやっていた頃からのお付き合いで、今はちきゅうをバイアウトしてまた新しいことを仕込んでいるみたいので、また浅井さんがなにか新しいものを作ったときには是非私が「炭鉱のカナリア」になりたいなと思っています。(炭鉱のカナリアについては書籍を読んで見てください)
今日はこんなところで。