横浜市の港南台駅と上大岡駅、大船駅のちょうど中間にある、開業から4年目の「つちはら整形外科クリニック」。
“ホテルのような心地よいクリニック”をコンセプトに、院内が美しいことはもちろん、土原院長をはじめ、スタッフ全員の対応にホスピタリティを感じます。特に印象的だったのが、院長が診療開始時に玄関で患者さんをお迎えし、お一人お一人に声をかけられる姿でした。
患者さんもスタッフも、みんなが笑顔でいられる、そんな心地よいクリニックづくりの秘訣を伺ってきました。
目次
定期通院する整形外科だからこそ「心地よいクリニック」でありたい
—ご開業までの経緯を教えてください。
大学を卒業後、海上自衛隊に入り、全国の自衛隊病院や衛生隊、潜水艦、そして地域の一般病院など、様々な場所で勤務してきました。自衛隊員の健康管理のため、内科的な診療も一通り行い、地域の病院ではご高齢者を診察する機会が多く、多岐に渡る経験を積むことができました。
その中で、ご高齢者が日常生活におけるちょっとした転倒が原因になって、そのまま寝たきりになってしまう様子を目の当たりにし、そういう方を少しでも減らせたらと思うようになりました。患者さんと接する医療をしたい、地域医療に貢献したいという思いを持っていましたので、骨粗しょう症の予防にも力を入れた整形外科クリニックを、家族と住むこのエリアに開業するに至りました。
骨粗しょう症の予防や治療には定期的に通院をしてもらう必要があることから、患者さんが通院しやすいよう「心地よいクリニック」でありたいと考えました。それを実現するためにはどうしたらいいか、マネージャーである妻とともに考え、本当にたくさんの意見を出し合って、現在の当院のイメージが出来上がりました。
患者さんとのコミュニケーションを診療にも活かす独自の視点
—心地よいクリニックであるために、どのような工夫をされていますか?
気持ちよく患者さんと接することを大切にしています。そのためには、基本的なことですが、患者さんの目を見てしっかりコミュニケーションをとることが重要です。X線画像を患者さんと一緒に見て丁寧に説明することも心がけています。信頼関係が築けると、患者さんは心を開いて話してくれるようになります。美容院に行った、旅行に出かけたなど何気ない会話から、現在の症状がわかるので、その時の状態に合った治療ができます。そういったささいなこともカルテのメモに残すことが大事だと考えています。
—先生がお出迎えし、患者さんに声をかけられている姿が、とても素敵だなと思いました。
挨拶は大切なコミュニケーションの1つです。まず初めに気持ちよく挨拶をしてから診察を始めるように心がけています。
玄関や中待合に患者さんをお出迎えに行くことで、普段の歩く状態や立ち上がり方を診られるので、痛みの程度、関節の可動域が確認できます。診察室では緊張してしまう患者さんもいらっしゃるため、意識しない状態を診ることはとても大切です。
普段の様子を事前に診ておくことで、その時の状態に合わせた治療を考えることができます。その上、診察室では患者さんのお話を聞くことに、より時間を割くことができます。
—それは土原先生ならではの視点ですね。コミュニケーションの1つ1つが患者さんのためになる治療につながっていくのですね。
待ち時間を表示することで、待たされるイライラを軽減
—多くの患者さんがおいでですね。待ち時間の長さと心地よさは反比例すると思いますが、この点について何か工夫はありますか。
お一人お一人の診察を丁寧にしようと思うと、どうしてもお待たせする時間が長くなるので、待ち時間の目安を待合室のモニターに表示しつつ、受付スタッフから直接伝えています。ディズニーランドでもアトラクションの列の最後尾に待ち時間の目安を表示していますね。いつまで待つのかわからない状況だと、たとえ待ち時間が5分であっても、イライラしてしまうことがあります。待ち時間を可視化しておくことで、そういったストレスをなるべく軽減できるように努めています。
また、待ち時間が少しでも有益な時間になればと思い、待合室のテレビは医療サイネージを採用しました。知ってもらいたい病気の情報や予防方法など、様々な情報を放映しています。待っていただいている間に、患者さんにとって1つでも新しい発見や、役立つ情報との出会いがあれば嬉しいですね。
納得して治療を選択してもらうためにサイネージと紙媒体を活用
—サイネージの導入は待ち時間対策という側面が強かったのですか。
患者さんに医療の知識をつけてもらいたいという思いもありました。治療は、医師だけが行うものではありません。ご自身が良くなりたいという気持ちが一番大切であり、自分の病気について「知る」こと、そして、様々な治療方法から自分が納得できるものを「選択」することが重要です。患者さんの「知る」や「選択」をサポートするのも医師に求められる役割ですが、すべての患者さんにすべての情報を伝えることはやはりむずかしいものです。多種多様な情報を伝えるためには、デジタルサイネージは有効な媒体だと思います。サイネージでは、当院で行っている治療法を紹介しており、実際に待合室でご覧になった患者さんが診察時に私に質問をしてくださいます。大枠を理解された上ですので、こちらも説明がしやすいと感じます。
患者さんが納得して治療ができるクリニックであれば、私たちが目指す「心地よさ」にもつながっていくと信じています。
—待合室に貼り紙がないのは、情報提供はサイネージに集約してあるからでしょうか。
そうですね、待合室には貼り紙をしない方針にしています。ただ中待合にだけは、紙媒体の専用のコーナーをつくっています。サイネージで放映した情報をもっと知りたいというご要望用に、プリントをラミネートして手元で読んでもらえるようにしてあります。サイネージは様々な情報を放映するのに適していますが、テレビと同じで情報が流れてしまいます。深掘りするためには自分のペースで読み込める紙が向いています。せっかくの機会なので、患者さんが「知りたい」ことには可能な限り応えたいです。
整理整頓と広いプライベートスペースがスタッフの心地よさにもつながる
また、心地よさを感じてもらうために、清潔であることは絶対条件だと思います。ですから、スタッフは整理整頓を徹底しています。日頃から整理整頓を意識しておけば、掃除にかかる時間も少なくて済みますし、その分は本来の業務に集中できます。「心地よいクリニック」でありたいという考えを理解して行動してくれるスタッフには感謝しています。
—スタッフの皆さんが笑顔で楽しく働いている雰囲気が伝わってきます。
クリニックを建てるときに、スタッフのプライベートゾーンとして、広いスタッフルーム・ロッカールーム・トイレ、動線のよい通路・階段・出入り口を配置しました。また、面談するためのミーティングルームも作りました。患者さんからも私たちの仲の良さを褒めていただくことがあります。私が気づかないようなスタッフの変化は、マネージャーが適宜フォローをしてくれます。
スタッフ一丸となって心地よいクリニックを実現し、患者さんの治したい意欲を後押しする
—スタッフに院長の方針を理解してもらうために何か特別なことをしていますか。
特別というわけではありませんが、毎日、朝・昼・夜の3回のミーティングを行い、問題点を共有しています。根幹となる方針は変更しませんが、日々診療をしていく中で、改善すべき事象はたくさん出てきます。私自身が気づくこともあれば、私とは違うシーンで患者さんと接しているスタッフが気づくこともあります。そういう場合は、トップダウンで決めるのではなく、彼らの意見も取り入れるようにしています。スタッフから意見が出ると、私の目の届かないところで、よく患者さんを見てくれているなと感心します。
心地よい空間も治療の一端を担っています。
ここで働いている私たちが心地よくいること、それが患者さんに伝わります。誰にとっても心地よいクリニックであれば、通院しやすく、「治そう」という気持ちになります。私たちチームは「治す」のではなく、患者さんが「治そう」とする気持ちを後押ししているだけなのです。
開業から3年半、少しずつですが思い描いていたイメージに近いクリニックになってきました。だからと言って、ここで立ち止まるのではなく、痛みを緩和するためのペイン外来や鍼灸治療など、新しいことにもチャレンジし、患者さんの「治そう」という気持ちをより高めるクリニックを目指しています。