Colum 未来の薬局

大手に真似ができない独立型調剤薬局ーライフバランス薬局ー

錦糸町駅から徒歩3分のライフバランス薬局。ガラス張りと外観デザインがスッキリキレイな印象です。

東京のJR錦糸町駅から徒歩3分のところにある、ライフバランス薬局。

ライフバランス薬局は、病院門前でもなく、マンツーマン型でもない。ましてや医療モールでもない「独立型」の調剤薬局です。

開局してまだ3年足らずにも関わらず、今では大手調剤薬局チェーンの取締役たちが視察にくるのだとか。小さな薬局の秘密を、代表取締役で薬剤師の小縣悦子社長に伺ってきました。

「セルフメディケーション」を目指して

夫婦で二人三脚運営

当薬局は錦糸町駅前の商店街にあります。

錦糸町駅から徒歩3分。
「ライフバランス薬局」は、駅前の通りをまっすぐ来たところの角に位置しています。

平成26年12月に開局した当薬局は、開局してからわずか3年弱。代表である小縣悦子さんと、ご主人と、二人三脚で運営されています。

特定の医療機関に頼らない独立型調剤薬局

ライフバランス薬局は、大きな病院の門前にあるわけではありません。また、薬局の周辺を見渡しても、どこかのクリニックの処方箋が集中するような環境にも見えません。

『うちは、一番、処方箋がくるクリニックでも、全体の5割にも満たないんですよ。』

ガラス張りで明るい調剤室。

社長であり、薬剤師の小縣さんは、そう話しはじめてくれました。

特定の医療機関の処方箋に頼るわけではない当薬局の運営は、まさに「独立型」。
しかし、開局してから3年足らずでも患者数は順調に増えているそうです。どうやら、その秘密は、ライフバランス薬局が目指す「セルフメディケーション」にあるようです。

開局のきっかけは「検体測定室」

前職の経験から検査ができる薬局があったら

もともと、大学病院等の薬剤師を経て、臍帯血移植の仕事に携わっていた小縣さん。

『臍帯血移植の仕事をしていたときに、血液の検査をいっぱいやって。血液検査でわかることっていろいろあるんですよね。病気のこと、遺伝子のこと。
だから、薬局で検査して自分の状態を知ることができる、そんな薬局があってもいいなと思ったんです。』

そんな中、厚生労働省より、平成26年4月に検体測定室が認可され、ガイドラインが出されました。 (参考: 検体測定室に関するガイドライン

筆者注:従来、血液などの検査を行う施設は、病院・診療所、あるいは、都道府県知事の登録を受けた衛生検査所しか許されていませんでした。しかし、このガイドラインが示されたことにより、利用者自らが行うことができる簡易な検査に限り、衛生検査所の登録をせずとも、薬局なども「検体測定室」として開設できるようになりました。

『門前でもない、マンツーマンでもない薬局を開設するにあたって、何か特徴がないといけないと考えていました。そんな中、検体測定室ができるなら、それを特徴にしようと。』

利用者自らが行う測定はまさにセルフメディケーション

前職で、患者さん自らが自分の健康状態を知ることの大切さ・面白さを感じていた小縣さんだからこそ、新しい制度をいち早く取り入れ、準備に動き出しました。

『検体測定室ということは、セルフメディケーション。セルフメディケーションで他に何ができるかな、どんな検査があるかなと探したら、結構あって。一通り全部集めたらどんなものかな、と思っていろいろ集めてみたんですよ。』

検体測定室にある骨健康測定器。

当薬局にある検査機器は、多種多様です。貧血や骨密度、血管年齢、体脂肪から、身長、握力まで、薬局内で測定することができます。

『採血以外でも、何か検査をして自分の事がわかったら面白いじゃないですか?リウマチになると手の握力って大事ですけど、握力はどこでも測れるわけではないから、ここに来たら測れるんだったらいいかなと。』

実際、目に見える結果で、自分の健康状態がわかるため、患者さん自身が積極的に治療・服薬に取り組めるようになっているそうです。

『今はね、例えば、貧血の患者さんが貧血の薬を処方されても、次の受診は1ヶ月くらい先になるんですよね。次の受診まで待たずに、うちの貧血の機械で測れば、貧血が改善しているのかどうかがわかるわけですよ。

測定をして少しでも改善していることが目に見えれば、患者さんもなんとなく頑張ってお薬を飲もうかなって思ったりしますからね。鉄剤って、ちょっと飲みにくい薬なんですけど、自分でお薬を飲んで、改善している結果が見えると、患者さんも嬉しくてお薬をちゃんと飲もうっていう気持ちになるんですよね。』

検体測定室と処方箋と、患者さんが少しずつ混ざり合う

とはいいつつ、開設当初は、検体測定室を利用する患者さんと、処方箋を持ち込む患者さんは、別々だったようです。

『当初は、調剤と測定室は、まったく別々でした。

そんな面白い、測れるものがあるんなら測ってみよう、とか、あとちょっとテレビで取り上げられたことがあって、テレビをご覧になった方が測りにいらっしゃったとか。うちはホームページ上でこんなの測れますよ、というのを出していることもあって、検査は検査で、お薬はお薬で、という方が多かったんです。』

開局から約3年をかけて、徐々に検体測定室の利用者と処方箋を持ち込む患者さんが重なり合うようになってきたとのこと。

『ご高齢の方だと、自治体の健康診断で、骨密度の測定が何歳かで終わるらしいんですよ。
(筆者注: 多くの自治体で70歳が骨粗鬆症検診の最後)

脳年齢測定器という面白い機械もありました。やってみたくなります!

『お薬は飲んでいるのに、その結果を測定する機会がなくなるんですよね。それで、測定したいという方に対して、区の方であの薬局で測定できるよという案内をしてくれたそうなんですよ。そういう方がお友達を連れて測りに来てくれたりして、近所の方にも知ってもらえるようになりました。

そうこうしているうちに、調剤もやっているなら処方箋もこっちに持ってこようか、と少しずつ測定の患者さんと処方箋の患者さんで、同じ人が出てくるようになってきたという感じです。』

「相談をしてもらえる関係」づくりの工夫

2016年から始まった健康サポート薬局、および、かかりつけ薬局/薬剤師の制度でも、患者さんの健康に関する相談に、幅広く対応できることが薬局側に求められています。

しかし、現状では、第1回でも書いたとおり、多くの調剤薬局でなかなか患者さんから気軽に相談してもらえる関係構築というのができていないように感じます。

患者さんが自分を出せるよう考えられた設計

ライフバランス薬局では、見ていると、患者さんが薬剤師に気軽に相談したり、話し込んでいる様子がそこかしこで見られます。

開局当初から、待合室の環境や設備には相当こだわったそうです。中央に配置されたテーブルも既製品ではなく、様々なシーンを想定して、友人の家具職人に作ってもらったそうです。当初、検体測定室の認可に合わせて4月に開局する予定が、設計がなかなか決まらず半年も開局が延びるほどだったとか。

『最初に設計士に頼んだら、一般的な壁際にソファがあって、カウンターがあるような、普通の調剤薬局のデザインで上がってきて、そんなんじゃダメだと。

セルフメディケーションなんだから、自分を出してもらえるところにしないといけない。こっそり来たり、慌てて帰るような待合室にしたくなかったんです。』

テーブル席にすることでリラックス効果

患者さんがゆっくりできる環境を整備し、お薬を渡す際には、テーブル席で対応するようにしているそうです。

患者さんにお薬を渡す際に使用するテーブル席。広々としてゆっくり話せる環境です。

カウンターで渡すと、患者さんも荷物持ってたりしますし、カウンター越しでは落ち着かないですよね。聞きたい話も聞けなくなっちゃいます。

さすがに何人も患者さんがいらっしゃると、やむを得ずカウンターでお渡しすることもありますけど、なるべくテーブル席でお渡しするようにしてます。 だって、具合が悪くて薬をもらいに来ているのに、立ってカウンターに来るの嫌でしょ?

テーブルの席で、ゆっくり座った中で患者さんもお薬の説明を聞ければ、リラックスできて、なんとなく気楽に聞きたいことも聞けますよね。』

食品もジャンルごとに900品目以上

食事制限のある方にも選ぶ楽しみを

ライフバランス薬局のお話をお聞きしていると、内装や置いているもの、導線まで、全てが、「いかに患者にとって身近な健康の相談窓口となれるか」を基本として設計されていることがわかります。 壁一面は棚になっていて、食品を中心に様々なものが置いてあります。

『食品は主に3つのジャンルに分けて置いてあって、右側から、腎臓病向けのタンパク質とか塩分を取れない方向けの食べ物、真ん中は嚥下障害や胃腸の手術後の普通の食事がたくさんとれない方向けの食べ物、一番左は、糖尿病で糖質制限がある方向けの食べ物になっています。』

商品1個ずつを手に取れるようにディスプレイされています。

見ていると本当にいろんな種類を置いてあって、味ごとの違いや調味料など、こんなものもあるんだ、という発見があります。

『最初はあんなにいっぱいなかったんですけど、ああいう食品って業務用だったりするので、箱買いしかできなかったりするんですよ。でも、それだといろんなものを試せないし、選ぶ楽しさもないじゃないですか。だから、うちの薬局で1個ずつでも買えるようにしているんです。』

ライフバランス薬局では、薬局の負担で試食会なども行ったりしているそうです。

『普通の人もスーパーに行って自分のご飯を、好きなものを買いたいときに買えるように、病気の人も幾つかの中から選べる。そうじゃないと食事の楽しみが無いですよね。』

デジタルサイネージでも食品の紹介映像を放映

テレビでは取扱商品の説明も放映。待ち時間に患者さんが見てくれるそうです。

薬局内のデジタルサイネージでも、様々な食品の紹介などを映像で流しています。

『薬局って、どこも無機質な印象がありますよね。あってもテレビだけとか。 うちは、こういう薬局だからテレビの放映内容にもこだわりたかった。最初は自分でパワーポイントで作ってやろうかな、とも思ったけどやっぱり無理だな、と。』

調剤を待っている間、検査結果を待つ間、そんなときに棚に並ぶ商品を手にとって見たり、映像で見て気になったり。 少しでも興味を持ってもらう、そういう仕掛けと、ストーリーをあらゆるところに感じます。

大手にはマネ出来ない、「個店」だから出来ること

ライフバランス薬局には、大手調剤チェーンの役員なども頻繁に視察に訪れるそうです。

『でも、このモデルって大手にはマネできそうで、できないですよね』と小縣さん。

ご高齢の患者さんも多いためお薬の飲み忘れを防ぐグッズも販売しています。

『大手チェーンは、どうしても薬剤師の出入りや異動もあるし、収益のためには効率よく捌いて行かないといけない。 でも、これからの薬局は、あの薬剤師に説明してほしいから、という理由で薬局を選んでもらいたい。 それは薬剤師としてのスキルだったり、コミュニケーション能力だったり、あとは、患者のバックグラウンドを覚えていることが大切ですよね。』

ライフバランス薬局では、なるべく同じ患者さんは同じ薬剤師が対応するようにしているとのこと。また、少しでも患者のことを覚えておけるようにカルテに患者の特徴を書くなどの工夫も。

『ついこの間も、大学生くらいの方が来て、最初に来た時は松葉杖ついていたから、次に来たときに「あら、松葉杖取れたのね」って声をかけたら、「なんで知ってるんですか?」ってビックリしてて(笑)』

患者さんに相談されるためには、まず、患者さんのことを知ろうとする。そんな、言われてみれば当たり前のことにハッとさせられた。

『自分のことを覚えておいてくれた人のことって信頼できるじゃないですか。』

緩やかではあるものの、一人の患者さんに対して、一人の薬剤師が担当するライフバランス薬局。いつも同じ薬剤師さんが対応してくれたら、さらに相談しやすい関係が出来上がるのだろうと思えました。確かに、配置替え等で店舗ごとにスタッフの入れ替えが発生する大手調剤には、なかなかマネできない、個店だからこその良さを活かした取り組みです。

インタビューを終えて

今回はインタビュー第1回目として、錦糸町のライフバランス薬局の代表 小縣さんにお話をお伺いしてきました。

お話をお聞きする中で、終始感じたことは、「いかに患者の気持ちに寄り添えるか」という理念に近い思いと、その思いが、小縣さん、ご主人の雰囲気、内装、置いてある商品、すべてに行き渡っているということでした。

最後に、立ち話程度に、「薬剤師の採用とか教育とかに苦労しませんか?」と聞いたところ、
『幸い、うちは、いい人が来てるのよね。運が良かったのかしら。自分達で勉強しに行ってくれたりするし、勉強した内容の共有とかもしてくれるし』とのこと。

この薬局で働いていると、きっと多くの患者さんから、本当にいろんな相談(決して処方とかに限らず)を受けるんだと思います。いろんなことを相談されるから、良い意味で勉強しないといけないプレッシャーがある。 ここで働くことは、薬剤師にとってきっとやりがいに満ちた仕事なんだろうと、そう思える薬局でした。

ライフバランス薬局

ライフバランス薬局(株式会社ライフバランス)
代表取締役 薬剤師 小縣 悦子
〒130-0012 東京都墨田区太平3-1-1
TEL:03-6240-4303(日中・夜間)
FAX:03-6240-4307
平日/9:00~20:00、土曜/9:00~19:00、祝日/9:00~17:00
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